今回のブックレビューは、「動的平衡2」福岡伸一著でした。なかなか難しい本です。
動的平衡とは、化学や生命の平衡は反応が停止しているのではなく、正逆方向の両方向の反応速度が等しくなったので、反応が停止したように見えることであり、平衡は外見上静的に見えるが、実際は動的状態にあると考えるということらしいです。文字通り、動的(ダイナミック)に平衡を求め続けて変化している中で生まれている状態とのことです。
福岡氏は、あとがきで、このようなことを書いておいでです。 人生には、さまざまな出来事があり、思うとおりにならない時に、何か原因があって因果的にそうなっているとか、あらかじめそうなることが決められている(決定論的に)と考えてしまいます。 しかし、量子の世界で見たときに「因果律」はどこにも存在せず、電子は全く自由で、どのような状態でもあり、多重世界的なのです。それをあるタイミングで観察して切り取ってみると因果律が存在しているように見えます。でもそんな因果律に縛られることは、本来自由なのだから意味がないよ。とおっしゃっています。
各章では、遺伝子の話、植物から動物への流れ、昆虫を題材にしての生物論の話、生命が宇宙からやってきた話、ヒトフェロモンなどの事例を紹介しながら、上記の我々は本来自由であることを説明してくれています。
そして、私たちの世界は原理的にまったく自由なのです。選びとることも、そのままにしておくことも可能です。その自由さのありように意味があるとおっしゃっています。
ブックレビューの会では、レビューアの広浦さんが、順にレジュメを使って説明をしてくださいました。第一章で、「エピジェネティックス」という新しい生命観が説明されます。生命やその進化において、遺伝子は大きな役割を担っているが、遺伝子以外の何かが生命を動かしている可能性があり、それを「エピジェネティックス」と呼んでいます。ヒトとチンパンジーはDNA情報で2%足らずの差しかない。この差を創るのは遺伝子そのものではなく、遺伝子活性化のタイミングを制御する仕組みの受け渡しが影響しているのではないか。それが「エピジェネティックス」なのだとのことです。
プログラムやプロジェクトマネジメントのプロセスがどんなに精緻に定義されていても、一つ一つのプロジェクトは異なります。プロジェクトの特性に合わせて、テーラリングすることで、最適な価値を生み出していくように工夫をします。自由度があるから、より良いものを生み出していけるのかもしれません。最初に決めた成果物を計画通りに生み出すことも大事ですが、プロジェクトの活動の中で、デザイン思考をしながら、突然変異を生み出して、イノベーションを起こしていきたいと思います。我々には、それをやれる自由があるのだと考えて、進めていきたいものです。
直接関係ないのですが、議論の中では、カオスの境界、フォトリーディングやグラフィックレコーディングなどの話も出て盛り上がりました。次回の6月は、「EXTREME TEAMS」で実施予定です。
※フォトリーディング:毎秒 1 ページを超える速さでページを進めて、写真を撮るように本の情報を脳に送り込む速読術。単に1回流すだけではなく、もう一度見直し、先ほどの長期脳に入れたイメージから重要な情報を抽出するのだそうです。
※グラフィックレコーディング:会議での議論をグラフィック視覚化し、参加者へ共有する手法(サラリーマンイノベーションセミナーの記事の中に例を掲載しています)
▼「動的平衡2」木楽舎のwebページ(2011年)
■関連リンク
▼動的平衡(2009年)
▼動的平衡3
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